カブキマン
関根勤推奨。ナムコ狂乱。

カブキマンは映画「未来忍者」「ゼイラム」などのヒット作を出したナムコが1990年にあの「悪魔の毒毒モンスター」シリーズで有名なトロマと協同で製作し、ちゃんと日本でも公開された変り種の映画です。ちなみにナムコはこの映画を最後に映画産業から撤退したそうなので、ある意味呪われた作品といえるかもしれません。

内容自体は、はっきり言って無茶苦茶の一語に尽きます。
おそらくは意図してそういう風に造ってあるのでしょうが、正に日本を誤解しているアメリカ人アメリカを誤解している日本人の共同制作という雰囲気がビンビンに伝わってきます。

しかし、日本文化に対する勘違いやSFXのチープさを無視すれば所々にブラックジョークが効いてて中々楽しめる作品になっていますし、ナムコ、もしくはトロマのネームブランド(?)が効いているのか、ヤフオクなどでも意外と高値がついたりしています。



冒頭、瞑目して般若心経を唱える歌舞伎役者・サトウの傍で「水星が旅を終え、竜が木星の輪を通る時、もしも猿が豹の背中に乗り、虎が美女を食べると魔王が世界を永遠に支配する事になるのです・・・」と訳の分からない事を口走るアジアンビューティ。
その魔王に対抗できる人材がもうすぐ現れるらしいのですが・・・
B級映画的美女
その人材=イチロウはセクシーな妻とイチャついてる最中に殺人鬼に踏み込まれていきなり殺されてしまいます。勿論家族も皆殺しです。「You can kill me・・・Bat you can`t kill the spirit of KABUKIMAN・・・」と言い残して事切れるイチロウ。
カブキマンは不滅だ!・・・と思う・・・
その頃、NYPD(ニューヨーク・ポリス・デパートメント)の巡査部長で蝶々夫人を愛聴するハリーは猟奇殺人事件の捜査に励んでいたのですが、その日は彼女のコニーに食事の約束をすっぽかされて仕方なく一人でカブキ俳優による「カブキ・カップル」なる演目を見に行くことにします。ちなみにこの催し、スチュワート財団の会長・レジー・スチュワート氏のスポンサーによるものらしいのですが、ご多聞に漏れず、彼も裏で色々と悪い事をしているようです。
嘘つけw
やめてくれ〜
で、楽屋では先程のサトウ氏がアジアンビューティが見守る中、カブキマンを出現させるための聖餐と称して曰くありげな木箱に納められた大量のミミズを頬張っていました。こうして始まるカブキ・パフォーマンス。しかしどう見てもカブキというよりは志村けんのバカ殿コントという感じです。
ドリフがやってるんじゃないかい?
その頃、イチロウがこないのを心配するアジアンビューティを尻目に予行演習に余念の無いサトウ氏。どうやら彼はアジアンビューティの祖父のようです。見得を切りながら舞台に出るサトウ。沸き起こる拍手。そして悲劇は起こりました。

おもむろに青い隈取(余談@)の男が立ち上がり、サトウにマシンガンを乱射したのです!蜂の巣になるサトウ。悲鳴をあげるアジアンビューティ。演出と勘違いして大喜びの観客。巻き添えで撃ち殺される他の役者。ハリーも大喜びでバカ笑いしてましたが、隣のオバちゃんが流れ弾に当たって死んだのを見てようやく事態を悟り、慌てて犯人逮捕に乗り出します。他の観客も事態を悟り、パニックに陥ります。

ハリーは次々と犯人を打ち倒しますが、その最中、偶然にも撃たれて虫の息のサトウの隣に倒れ込んでしまいます。すると何を思ったか、いきなりハリーにディープキスをかますサトウ。ミミズを口移しされ、悶え苦しむハリー。その顔は何故か中途半端なカブキメイクが・・・!そして事切れるサトウ。体に異変を感じながらも逃げる犯人達を追うハリーですが、とうとう異変に耐え切れずに倒れ込み、立ち上がった時には何故かマッキッキの着物姿に・・・しかも彼が現場に戻って来た時は既に同僚達が駆けつけて現場検証に当たっていました。そこへ飛び込んでくるハリー。ハリーの異様過ぎる姿に呆れ返る一同。
ムチュ〜
その頃、この事件の黒幕であるスチュワート財団の会長レジー・スチュワートのビルでは反省会が行われていました。派手に舞台で発砲したレンブラントをなじるレジー。しかし彼は何処吹く風です。ちなみにイチロウ一家を皆殺しにして青い隈取をしていた男です。
そこにレジーを訪問して来たスナイプス牧師。どうやら寄付が減っているのでサツに悪事を喋られたくなかったら寄付を増やせと言いに来たようです。しかし、彼はドジを踏んだ自分の甥っ子を彼の目の前で射殺して見せてびびらせて、更に自分の計画(暴動を利用して街を牛耳る)に協力するよう持ちかけます。

翌日、出勤してきて早速昨日の事で同僚達から笑われるハリー。おまけに上司のベンダー署長にどやされている最中にカブキパワー(?)が発動しそうになって下半身だけ下駄とキモノ姿になって一同を唖然とさせるわ、彼に面会を求めてきたアジアンビューティがアナタは我が家に先祖代々伝わる超能力を引き継いだからミミズを喰え!と手掴みで生きたミミズを突きつけてくるわでもう散々です。しかも彼女が言うにはサトウを殺したのは人間ではなく、悪霊だというではありませんか!この二人のやりとり、かなり笑えます
うわーお!
誰が食うかボケ!
で、気を取り直してハリーは事件の黒幕と思われるスチュワートに探りを入れるべく下駄を履いたまま会いに行きますが、結局彼の部屋に飾ってあった1638年作の将軍イエヤス愛用(余談A)の日本刀を振り回してうっかり彼の人生100回分の値段はしそうな高価な壷を叩き割っただけ・・・

気を取り直して同僚兼恋人のコニーとジョギングの約束をしていたので下駄をジョギングシューズに履き替え、コニーとの楽しいジョギングを満喫するハリー。しかしそこにコニーに麻薬取引の証拠を掴まれている悪徳牧師・スナイプスの手下が襲い掛かってきます。ボコボコにぶちのめされるハリー。大ピンチのコニー。そこに奇跡が起こりました。ハリーの体をカブキの垂れ幕が包み込み、みるみる内にカブキマンに変身したのです!
いよっ!千両役者!
「カぁブぅキぃマぁンさぁんじょ〜ぅ!」

とメチャメチャアメリカ訛りの日本語で名乗りを上げるカブキマン。あまりの事にポカーンと見守るしかない悪党達。しかも蝶々夫人を熱唱して側転して外灯にゴチンとぶつかり、「誰が立てた?」と悪党達に八つ当たりするカブキマン。
ぎゅんぎゅんぎゅん!
ごちーん!
お互い気を取り直して戦闘に突入です。
しかしこうなったらチンピラごときは敵ではありません。巨大な扇子で吹っ飛ばし、いつの間にか腰に挿されていた安そうな刀で鉄パイプを輪切りにし、拳銃を突きつけたチンピラを割り箸でグサグサに突き刺し、悔し紛れに喚き散らしていたチンピラ達のリーダー格の女の口に寿司を突っ込むカブキマン。拍手喝采の野次馬達。最後に向かってきたチンピラを殴り倒して頭を踏み潰す所がいかにもトロマらしい演出です。
強いぞ僕らのカブキマン!
しかしコニーは悪党達にボコられて重傷。

ちなみにこれはアイキャッチ。

ハリーは現場に駆けつけたアジアンビューティ=ロータスと共にやむなく近くのレストランで入院したコニーの回復を待つ事にします。
そこでハリーは自分が日本人になりつつあるということに気がつきます。
運ばれてきた生魚を美味そうに貪るハリー。
魚の種類はなんだろう?
・・・って待てコラ日本人でもそんな事やらんぞ!
と突っ込みを入れたくなる食べっぷりですがそんなこと気にしてたらこの映画は楽しめません
この期に及んでも超能力を完全にするには訓練が必要だというロータスの話にマトモに耳を傾けようとしないハリー。しかもコニーはレンブラントに医療ミスを装って殺されてしまい、しかもハリーも捜査から外されてしまいます。

怒り心頭に達したハリーは直接スナイプス牧師の所に殴り込みに行きますが、ロータスの言葉どおり中途半端に見につけた超能力は100%の力を発揮できませんでした。カブキマンならぬピエロマンになってしまったハリーはSFX以上に気合の入ったカーチェイスの末、何とか追っ手から逃げ切ることに成功します。
結構迫力あるシーンでした
しかし、カーチェイスの途上でベンダー署長行きつけのクリーニング屋をメチャメチャにぶち壊し、停職を言い渡され、挙句に牧師に告訴されてしまうハリー。こうなればロータスに頭を下げるしかありません。
泣きっ面に鼻
こうしてアメリカ式和風住宅なロータスの部屋にやってきたハリーは彼女のペットの日本猿・トヨタの出迎えを受け、ロータスに今迄の非礼を詫びて聖餐用のミミズも全部食べた(余談B)から自分を訓練してくれるよう懇願します。
只今特訓中
早速始まる訓練。その内容は・・・
逆さ吊りになって床にぶちまけた米粒の数を数え集中力を養うというもの。しかもサボれば竹の棒で股間をドツかれます。
一方、スチュワート一味もいよいよあの予言の成就に向けて動き出していました。そしてハリーに用心して彼の抹殺も命じます。
その内銅像が立つぞ
で、訓練の甲斐あってカブキマンの超能力をマスターしたハリーは早速犯罪の撲滅に乗り出します。小悪党を片っ端から退治して一躍人気者になるカブキマン。この勢いでいよいよスナイプス牧師の教会に殴り込みアゲインです。

レンブラント駆る大型トレーラーに正面から挑むカブキマン。しかしあえなくペチャンコに悲嘆にくれる人々・・・
ど根性カブキマン
今なら狭い隙間もラ〜クラク
しかし彼は不死身でした。拍手喝采の人々。

迎え撃つレンブラント一党でしたがカブキマンのニホンパワーにタジタジ。しかも空を飛んで逃げられてしまいます。
まるでタケチャンマンの飛行シーンみたいですが、それでも大はしゃぎのロータス。そしてスナイプス牧師を捕まえてスチュワートの悪事の証拠を掴むことに成功します。
これで勝利は貰った!
スナイプスをエンパイアステートビルに吊るした後、意気揚々とロータスの自宅で祝杯を上げ、ちゃっかりロータスともいい仲になるハリー。その後すぐ警察に証拠のテープを持って行きます。
良い子はここまで
その頃、スチュワート一味も魔王復活に向けて着々と準備を進めていました。
どこぞの工事現場らしき所に腹を空かせた虎猿を乗せられるよう訓練した豹とその豹に一番器用に乗るキツネザルを持ち込む一味。ちなみに猿なら何でもいいそうです。こうして既に水星が旅を終えた今夜、次に竜が木星の輪(余談C)を通過するのを待ち焦がれるスチュワート。
ヒネリも何もありません
その頃、警察からかえったカブキマンは早速布団の中のロータスに抱きつきますが、なんと中身はレンブラントでした!不意を疲れてしたたかに殴られ、しかもロータスが虎の餌にされるべく誘拐されたと聞いてショックで元に戻るハリー。それでも辛うじてレンブラントを倒してトヨタと共にロータス救出に向かいます。
愛は地球を救う?
ロータスを金網に縛りつけ、虎に食わせる準備を整えたその時ハリーが殴りこんできます。瞬く間に手下を蹴散らしてロータスを解放するハリー。カブキマンがもたらした証拠を手に駆けつけて来たベンダー署長率いる警官隊。逮捕されるスチュワート一味。
メデタシメデタシと思いきや、スチュワートはしぶとい男でした。隙を見て情婦の一人に虎をけしかけたのです!多少質が落ちても美女なら誰でもいいようです。哀れ虎に食われる美女。
いただきまーす!
そして予言の1つが成就され、スチュワートの体にも異変が起こりました。変身を始めるスチュワート。慌てふためく警官にぶつかって転んで失神するハリー。でっかい芋虫に変身し、そこからとんでもない化物=魔王になって出てくるスチュワート。
あとは猿が豹に乗って竜が木星の輪を通るだけです。
特別サービスで竜が輪を通るシーンを見せてくれるスチュワート。
そのまんまやんけ!
俺にもなれるかもしれない・・・
辛うじて目覚めたハリーもカブキマンに変身して魔王に立ち向かいます。そこに緊急事態が!
なんとトヨタが車を運転して豹に近付いていくではありませんか!この猿、ハリーをロータスが囚われている現場に導いてからは足を引っ張るようなことばかりしています。
カブキ技使うヒマもありません
それでも辛うじてトヨタが豹に乗ることを阻止するロータス。カブキマンと取っ組み合いながら爆発する魔王。
こうしてハリーはカブキの星となりました・・・
カブキ座
・・・と思いきや、ちゃんと生きていました
ご褒美に停職取り消しと休暇を貰うハリー。これから部屋を掃除して空を飛ぶ練習です。
まあ結果オーらいということで
メデタシメデタシ



ついでだから余談
余談@隈取にも模様や色によって役柄が違うようですが、赤=紅の隈取は正義と勇気を表し、熱血も表現しています。写真でよく見られる歌舞伎役者の隈取は大概この紅の隈取がほとんどです。
反対に青=藍の隈取は邪悪・奸侫(かんねい)・非道を表し、公家悪と呼ばれる天下を狙う大悪人を表現する隈取だそうです。こうしてみたら案外きちんとした考証がなされているのかもしれません・・・と思うのですが・・・

余談A将軍イエヤスとは勿論徳川家康のことと思われます。ハリーは江戸時代の1638年作と、いかにもそれらしく説明していますが、家康の没年は1616年です。合ってるのは江戸時代だけジャンw

余談B劇中でハリーはチキンみたいな味だったと言っていますが、昔「世界丸見え!テレビ特捜部」という番組で台湾辺りの美人リポーターがミミズのテンプラをそれと知らされずに食わされるシーンがありました。感想は「味が無い」とのこと。で、正体を知らされた時、彼女は凍りついていました。

余談C今まで理由が色々あって見えなかっただけで木星探査機によってその存在がちゃんと確認されているそうです。

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