PHASE−28 「残る命 散る命」 |
クレタでオーブ艦隊に挟み撃ちにされ、大苦戦のミネルバ。もはや後退もできず、一方を突破するしかないと腹をくくるタリア。 シンもアビスと互角に渡り合いながらもあのパイロットがステラと同じ怪しい研究の犠牲者と悟ります。 アスランもムラサメ部隊と戦いながらキラ達のとの話、そしてハイネとの会話を思い出し、やりきれない思いを噛みしめます。そんなアスランに襲い掛かるカオス。 ミネルバも先制攻撃で穴だらけにされたとはいえ、まだまだ火器は健在です。中々進展しない戦況にいらだつユウナに一喝するトダカ。 「実戦はお得意のゲームとは違うのです!」 ムラサメ隊の隊長、馬場一尉はインパルスとセイバーの相手を地球軍に押し付けてミネルバを攻撃する事を指示します。確かに母艦さえ撃沈すればエネルギーに限りのあるMSはどうにでもなります。 もとより艦船にとって航空機は天敵中の天敵。対空火器が充実しているミネルバもそれは同じです。ムラサメを撃墜しつつも徐々に追い込まれるミネルバ。いくらレイとルナマリアが優秀なMSパイロットでも空を飛べないザクは手足のついた砲台も同然です。ミサイルの雨を喰らって片腕を失うレイのザク。 そして遂に艦橋に取り付く馬場一尉のムラサメ。万事休すか!? ・・・・なわけありません。 案の定馬場のムラサメはいきなり乱入したフリーダムにライフルを撃たれ、周囲のムラサメ隊はあっという間に翼を斬られて失速します。 悠然と現れるアークエンジェル。颯爽と現れるストライクルージュ。 「オーブはこんな戦いをしてはいけない!これでは何も守れはしない!地球軍の言いなりになるな!オーブの理念を思い出せ!それ無くして何のための軍か!?」 そんなカガリに憎悪むき出しでミサイルをぶっ放すシン。自分の女にミサイルをぶっ放ったシンの暴挙に驚くアスラン。しかし当然フリーダムがそれを阻止し、アスランの制止も聞かずにインパルスに襲い掛かります。 「お前も・・・ふざけるなあー!」 種が割れるシン。必殺の斬撃をかわされ、驚くキラ。 キラを制止しようとフリーダムに斬りかかるアスラン。インパルスに襲い掛かるスティングとアウル。ユウナにミネルバとアークエンジェルを撃沈するよう督促するネオ。 兎にも角にもミネルバを落とせとわめくユウナ。 漁夫の利を狙ってキラとアスランの戦いに割って入ったスティングですが、相手が原子力では分が悪すぎます。瞬時にフリーダムに切り刻まれてしまいました。 タリアはアークエンジェルに敵対する意思がないと認めながらも、前回ボコボコにされた事を根に持っているので敵艦として対応するよう命じます。 そして遂に悲劇は起こりました。シンに猛然と襲い掛かるアビス。ブラストシルエットを破壊されながらもジャベリンを投げつけるシン。それは見事にアビスのコクピットを貫きました。 糸の切れた操り人形のように海中に落下し、爆発するアビス。 「アウル!」息を呑むネオ。 アビスを屠ったシンはミネルバにフォースシルエットを射出させ、更に元気が出るビームで力を取り戻し、猛然と後陣のウィンダム軍団に襲い掛かります。 インパルスの相手を地球軍に任せ、総がかりでミネルバに攻撃を加えるオーブ軍。それを止めようと割って入り、必死に説得を試みるカガリ。そんな彼女の姿に心を動かされかけるオーブ兵達。 しかし、馬場一尉はオーブ軍人であると同時に高潔なサムライでもあります。眼を光らせ、カガリに反論する馬場。 「そこをどけ!これは命令なのだ!今のわが国の指導者、ユウナ・ロマ・セイランの!ならばそれが国の意思!なれば、我等オーブの軍人はそれに従うのが務め!その道、如何に違おうとも難くとも、我等それだけは守らねばならぬ!おわかりかぁー!?」 この言葉、今のトダカの苦しい心中を代弁しているともいえます。 そもそも軍隊とはその国最大最強の組織化された武装集団であり、故にその力は最も頼もしい存在であると同時に脅威でもあります。だからその武力なり組織力の使用には法律によって厳しい制限が設けられているのです。そしてその軍隊を構成する軍人達はその強すぎる力ゆえに個人の意思によってその力を使うことを禁じられているのです。 SFC「スーパーロボット大戦EX」でロンド・ベル隊の一人が「軍人は個人の意思で動く事はできない。そうでないと軍隊としての組織と秩序を守ることはできない。」という意味のことを語っていますが、そもそもアークエンジェルもフリーダムも、そしてストライクルージュも正規の軍隊が保有するべき兵器なのです。彼等が自家用車のように乗り回しているのでつい忘れがちですが、彼等のあり方の方が余程異常なのです。 そして、その強大な力を一度行使すれば、被る被害は敵味方を問わず最悪なまでに甚大なものとなります。それ故国家の指導者達は常に最悪の事態をできるだけ回避しようと外交努力を行っているのです。 しかし、強国というものはあえて強大な軍事力を背景に戦争を起こすことで自国の利益を確保しようとし、かえって国際的な非難を一身に浴びたり余計に悲惨な結果を自国に招いたりするものです。第2次大戦時の日独伊しかり、朝鮮戦争を起した北朝鮮しかり、チベットを侵略しベトナムに攻め込んだ中国しかり、クゥーエートに攻め込んだイラクしかり、そしてベトナム戦争やイラク戦争を起こしたアメリカしかりです。 それはともかく、カガリの心情を察しながらもカガリを実力で排除せざるを得ない馬場一尉。 「必殺!馬場16文投げー!」ビューン! 「きゃー!」 「我等の涙と意地、とくと御覧あれー!」 ミネルバと刺し違える覚悟で突っ込むムラサメ隊。こうなったらルナマリアごときは敵ではありません。ミサイルの集中攻撃を喰らい、大破するザク。 死に物狂いで応戦するレイとシン。しかし無駄でした。ミネルバに神風攻撃を敢行する馬場一尉。ご自慢の3連装主砲を完全に破壊され正に断末魔のミネルバ。 しかし、ミネルバ撃沈を神が大歓迎してもシンが許しません。 「ミネルバ、ソードシルエットを!全艦叩き斬ってやる!」 悲劇は更に加速されます。タケミカヅチを前面に出してミネルバ撃沈を狙うトダカ。慌てるユウナ。少なくともトダカはユウナの当初の命令=ミネルバ撃沈を実行しようとしているのです。文句を言われる筋合いはありません。 キラと戦いながらも必死で説得を試みるアスラン。しかし、最早軍人としての道を完全に踏み外しているキラにアスランの言葉は届きません。 「でもカガリは今泣いているんだ!こんな事になるのが嫌で、今泣いているんだぞ!何故君はそれが分からない!?なのにこの戦闘も、この犠牲も、仕方のない事だって、全てはオーブとカガリのせいだって、そう言って君は撃つのか!?今カガリが守ろうとしているものを!?なら僕は・・・君を討つ!」 「この甲斐性無しがー!」 ずばずばずばずばずばずばーん! 「奥義・・・ヤマト流五月雨微塵切り・・・!」 ザフト軍人として複隊してしまったために泣いている自分の女に救いの手を差し伸べる事もできない不甲斐ないアスラン。そんなアスランに種割れして怒りの刃を向けるキラ。瞬時にダルマにされるセイバー。 その最中も全てをオーブとカガリのせいにして鬼相すら浮かべてオーブ艦を斬りまくるシン。 ミサイルを放ちつつ、ミネルバに突進するタケミカヅチ。しかし、航空機相手なら大苦戦の戦艦ミネルバも相手が空母なら断然有利です。猛砲撃を受けて傾くタケミカヅチ。 トダカの胸倉を掴んで激しく抗議するユウナ。しかし彼はユウナの命令に従っているだけです。止めようとするカガリに攻撃を加えるシン。カガリをかばって撃墜されるムラサメ。 総員に退艦命令を出し、全ての責任を一身に背負うことを宣言するトダカ。 「これでオーブの勇猛も世界中に轟くことでありましょう!」 言いざま、ユウナの胸倉を掴んで力一杯放り投げるトダカ。壁に叩き付けられてノビるユウナ。 「ユウナ・ロマ・セイラン!我が怒り、受けてみよ!」 「喰らえ!トダカ流殺人奥義、必殺・・・!」「ひぃぃぃぃ〜!」 「烈風背骨粉砕投げー!」ビューン!! 「ぐぶえ〜!」「出たか!トダカ一佐の幻の奥義が・・!」 改めて退艦命令を出すトダカ。共に残るとごねるアマギ。 ト「ダメだ!これまでの責めは私が負う!貴様はこの後だ!」 ア「いえ!」 ト「既にない命と思うなら想いを同じくする者を集めてアークエンジェルへ行け!それがいつかきっと道を開く!」 ア「と・・トダカ一佐・・・!」 ト「頼む!私と、今日無念に散って逝った者達の為にも!!行け!」 「貴様!どうしても私の命令が聞けんというのか!?」 「ならばトダカ流最終奥義、滅殺太陽投げを喰らわせてやる!」 「ひぃぃぃぃ〜!退艦します退艦します!」 悲劇はクライマックスを迎えます。カガリに見せつけるように我が物顔でオーブ艦を斬り刻んでいたソードインパルスは断末魔のタケミカヅチに止めを刺すべく艦橋ににじり寄ります。そこにかつての恩人がいるとは知らずに・・ 「げへへへへ・・・ザフト軍人の心意気を見せてやるぜ!」 「ふ・・・この体格差では我がトダカ流殺人術の使いようがないな・・・」 ・・ソードインパルスガンダム・・その姿はこれまでに無く醜悪です そんな史上最も醜いガンダムを端然と見据えるトダカ。その姿は軍人として責任ある地位にありながらオーブの理念を破ってしまった事への落とし前をつけようとしているかのようです。 「シン・アスカ・・・先に地獄で待っているぞ!」 「うっぎぃぃぃぃ!」 「トダカ流奥義!真剣ビーム取り・・・ぐわっ!無理だったか!」 そんなトダカに醜く顔を歪めて力一杯斬艦刀を振り下ろすシン。轟沈するタケミカヅチ。 所属と本来の志は違えど同じ軍人として感じるところがあったのでしょうか?沈み逝くタケミカヅチに最敬礼を捧げるネオ。弔いの敬礼を捧げるアマギ達。 そしてまだ殺し足りなそうなシン。 これで彼の勲章も更に増える事でしょう。 |
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