PHASE−33 「示される世界」

ステラの亡骸を抱え、とある湖にやってきたインパルス。
シンはステラと最後の別れを惜しんだ後、彼女の亡骸をそっと湖底に沈めます。連合にもザフトにも彼女の眠りを妨げさせないために。彼女は天国でも地獄でもなく、虹の橋に行ったような気がします。
さよならステラ
軍人になって全てを守るための力を手に入れたはずなのに、好きになった女の子を救ってあげることが出来なかった・・・シンに手を差し伸べるように沈んでいくステラの亡骸を見送りながら無念と無力感に苛まされ、慟哭するシン。そして彼が再び顔を上げた時、その目には悪鬼羅刹が乗りうつっていました
フォースの暗黒面に取り込まれた男
シンがステラを水葬にふしていたその頃、ザフト軍もステラ大魔神の攻撃で早速焼け野原と化した諸都市に赴き、救助活動に入ります。しかし、ベルリンを始めとした諸都市の被害は東京大空襲や広島・長崎への原爆投下もかくやという位です。
出来る事は生存者の救助と食糧の配給、負傷者の治療、そして遺体の埋葬と焼却です。
ステラ大魔神の爪痕
軍隊は基本的に敵軍と戦闘を行うための組織ですが、平時には訓練された組織力と整った命令系統を活かして阪神・淡路大震災やスマトラ沖地震などでの災害救助活動などにも多くの兵士が投入されています。アメリカにおいても正規の軍隊以外に、各州で成年男子の志願者で構成された州軍を組織しており、自然災害などに迅速に対応するシステムを整えているようです。最近は人員不足を補うためにイラクにも派遣されたりしているようですが・・・

眼下の惨状を見下ろし、地球軍に対する怒りを露にするタリア。
アーサーもタリアの怒りに同調しながらも、「討つべき物はさっさと討つべきだ」という前大戦のザフト軍のモットーが正しいのではないかと言い出します。アーサーがこのような考えを起すのも無理はないですが、そうなればまた不毛な殲滅戦の繰り返しです。
「やんのかコラァ!」「上等だ!表に出ろ!」
一方、シンの部屋を訪れたアスランはシンとレイが打倒フリーダムの方策を練っているのを見て愕然とします。シンは「今一番強いのはフリーダムだからそれを相手にした訓練をするのはいい事だ」と言いますが、その主旨がステラの仇討ちである事は明白です。しかし、現状ではアークエンジェル一党は明確ではないにしろ、ザフトの敵として認識されています。だからアスランにはシンが対フリーダム戦を想定したシミュレーションをしているのを止める筋合いはないのです。
益々深まるシンとの亀裂・・・

その頃、諸悪の根源と目されているアークエンジェルでは医務室でマリューとマードックがベルリンで拾ってきたムウそっくりの男に付き添っていました。マリューの話ではネオは治療の途中で一度目覚めて所属と名前(第81独立機動軍所属、ネオ・ロアノーク大佐)を名乗ったそうですが、検査の結果、ネオとアークエンジェルに保管してあったムウのデータは100%一致するとのこと。別人であり、別人でもないという事実に戸惑う一同。

「あなた・・・ムウなの?」
「そうだといったらオッパイ触らせてくれる?巨乳さん?」ヘラヘラ
「このセクハラ発言・・・間違いなく彼だわ!」
「ムウさん!再会の最初の言葉がそれですか!?」

そこにマードックの「少佐なんだろ!?これは!?」というセリフに反応し、目覚めるムウ。
自分が二つも下の階級で呼ばれたことに抗議しますが、その口調は故ムウ・ラ・フラガその人でした。あふれ出る感情を抑えきれず、泣き出すマリュー。しかし、ネオが彼女の気持ちを知っているわけがありません。「何だよ?一目惚れでもした?美人さん?」というセリフに、彼がムウじゃないという事実を突きつけられ、医務室を飛び出すマリュー。
私はミリアリアになりたい
しかし、彼等が見た限り、彼は頭の中身が違うだけで後は完全にムウ本人です。その事実に戸惑いを隠せないキラとマードック。

ミネルバではスクラップに囲まれててんやわんやのデッキに来たアスランにルナマリアがアプローチをかけていました。負傷しながらもヘソ出しスタイルでセックスアピールを忘れないのが流石です。しかし、それだけではアスランのカガリに対する想いは揺らぎません
オヘソでも悩殺できないのかア・・・
気を取り直してシンが過保護に扱われている事に不満をと不審を露にして、アスランを鼓舞します。折角抜きん出た実力と強力な権限を持っているのだからもっと思いのままに振舞えば良いと。しかし、力と権限を言う言葉を聞いた時、アスランの脳裏にある人物の顔が浮かびます。

その頃、アスランが脳裏に思い浮かべたであろう声がシャアのギルバートはある発表を行おうとしていました。テレビ局やミー・・・ラクスを執務室に入れ、全世界に向けて放送を始めるギルバート。ミネルバでも当然それを受信し、タリアは乗員に可能な限り聞くように命じます。ギルバートのメッセージと共に流されるステラ大魔神の大暴れ第25話で発掘されたロドニアのラボの映像。あまりの事に愕然とする世界中の人々。もっと驚く大惨事の張本人、ロード・ジブリール。
捏造映像流してるじゃないか!
ギルバートはユーラシア西側やロシア平原で地球軍の引き起こした惨禍を激しく非難し、ベルリンで暴れるステラ大魔神の映像を流し続けますが、それを見ていたアスランはある事に気がつきます。その場にいたはずのフリーダムの姿がなく、ステラ大魔神を倒したのがインパルスになっているという事に!しかし、一緒に見ていたシンはステラの死に思いを馳せ、その事に気がついていないようです。
この人ってメッチャ恐いんですよ!
更に拳を机に叩き付け、椅子から立ち上がって「なぜ我々は手を取り合ってはいけないのですか!?」と激しく語るギルバート。そこに興奮したギルバートをなだめるように現れ、演説を引き継ぐミー・・ラクス。演出効果満点です。
いよっ!千両役者!!

戦争の原因をユニウス7を落としたテロリストに押し付けながらも、プラントの責任を認め、協調を訴えるミー・・・ラクス。演説に耳を傾ける人々の中には、ランバ・ラル似のオッサンや、初めて画面にはっきりと顔を見せたシホ・ハネンフースの姿もあります。
今回は顔見せだけ
ミー・・・ラクスの平和のメッセージに目を潤ませる人々。深々と溜息をつくタリア。言葉を継ぎ、更に悪の元凶はロゴスであるとし、テロ組織ブルーコスモスも軍需産業複合体・ロゴスの下請けに過ぎないとしてロゴスのメンバーの顔写真を全世界に公開し、平和を望む人々全ての真の敵だと言い切るギルバート。自分の顔写真が世界に公開されて愕然とするジブリール。
これがロゴスの皆さんです
あ・の・ヤ・ロ〜!
大多数の一般人にとっては「ロゴス」という固有名詞は初めて聞く名前です。それだけに世界を常に戦争状態にして利益を上げる悪の組織という肩書きに真実味が出てくるでしょう。そんなギルバートの演説に感動に目を輝かせるシン。
デュランダルユーゲント候補生
「私が心から願うのはもう2度と戦争など起きない平和な世界です。よってそれを阻害せんとする者、世界の真の敵、ロゴスこそ滅ぼさんと戦う事を私はここに宣言します!」

世界中に沸き起こるデュランダルコール。彼等の瞳はキラキラと輝いています
ギルバートの演説に呆然とするタリアやアスラン。「大変な事になる!」と驚くカガリ。

「虫歯の無い人間は嘘はつきません!私の歯を御覧いただきたい!」アーン
「これは・・・大変な事になる!艦長!キラ!」
「彼の言うとおりだわ・・・虫歯が一本も無い・・・」
「虫歯を治療した痕跡すらない・・・やはり彼は正しいのか!?」
「・・・・オイ!」

タリアやアスラン、カガリ達は気が付いたのです。彼の言葉がより戦火を拡大させ、世界経済を破綻の危機に追い込むであろうことを。
ロゴスのメンバーは推測するに、それぞれの国の政治経済に大きな影響力を持つ大企業や財閥のトップであろうと思われます。世界中の人々にそれを滅ぼせ!と煽る事はそれぞれの国の経済を混乱に陥れるという事なのです。

更に人々はギルバートの言葉の矛盾に気が付いていません。戦争のない平和な世界を心から願うと言っておきながら、そのすぐ後にロゴスを滅ぼせ!と戦いを煽っているという事に・・・もっとも、銃を手に瞳をキラキラと輝かせながらデュランダルの名を連呼する人々は、ブレイク・ザ・ワールドの時にブルーコスモスのテロリストに煽られて「蒼き清浄なる世界のために!」と叫んでいた人々なのでしょう。
彼等の中には真の正義に目覚めたというよりも、よりわかり易い大義に飛びついただけの衆愚も相当数含まれていると思われます。

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