PHASE−22 「蒼天の剣」 |
冒頭、召使いの大西洋連邦大統領ジョゼフ・コープランドにプランの進行が遅れている事を詰問する飲んだくれのロード・ジブリール。勿論召使いの反論には耳を貸しません。ジブリールは言い争っている内にオーブを参戦させる事を思いつきます。かの国がアークエンジェルを匿っていたことがもう周知の事実になっているのでNOとは言えないだろうと、冷静さを取り戻してほくそ笑むジブリール。 で、オーブ軍総司令部ではユウナがトダカ一佐に出動を命じます。しかも彼が司令官として随行するとのこと。 「まあ色々あって代表が不在というとんでもない状況のわが国だ。だからこそ、国の姿勢ははっきりと示しておかねばならない!しっかりとよろしく頼むよ・・・今度こそ!」 確かにとんでもない状況ですが、カガリがいてもいなくても政治の実務は腹黒宰相・ウナトが仕切っているので大騒ぎにはなってもオーブの国政の運営には何ら影響は無いでしょう。むしろ結婚式の一件以来、株を落としまくりのユウナが、自ら出陣を決意するという方が余程問題です。政治家としての資質はともかく、軍人としての彼がどの程度役に立つのか・・・・ 場面は変わってファントムペイン御一行の母艦、J・Pジョーンズの一室。いつものように癒しベッドでおねむの時間の3凶人ですが、ステラがシンに貰ったハンカチを研究員に取り上げられそうになってカンカンに怒ります。ネオが何とかなだめて寝かしつけますが、彼女が起きた時には記憶を消され、ハンカチのことなど忘れてしまっていました。「あれほど死ぬのを恐がるあの子が死なずにすむには、敵を倒し続けていくしかないんだ・・・・」 ミネルバでは着任したハイネがナスカ級とは大違いのミネルバの装備にご機嫌です。堅苦しい態度のアスラン達にざっくらばんな態度で接するハイネ。誰とでもすぐに打ち解けるタイプのようです。 生真面目なアスランには彼の真似はちょっと難しいようです。 一方、ファントムペイン艦隊と合流するべく、荒天の中をスエズに向かって進軍するオーブ艦隊。船酔いで悶え苦しんでいるユウナはほっといて派兵に対して不平満々の艦隊首脳陣。オーブの理念「他国を侵略せず・他国の侵略を許さず・他国の争いに介入せず」の3原則に唾する行為ですが、彼等はまっとうな軍人。政府の命令にさりげなくサボタージュする事はできても真っ向からイヤとは言えないのです。 「うっぷ・・・・」 「おぉえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛」 「船酔いで人が死ぬことってあるかな・・・?」「あったらいいんですがねえ・・・」 こうして空母1隻、護衛艦6隻の堂々たる陣容でスエズに到着するオーブ艦隊。その情報はザフト軍の偵察員と近くの町にいたミリアリアにキャッチされ、ミネルバも最前線・ダーダネルス海峡に向かうべく出撃します。 しかし、敵の増援軍がオーブ艦隊と知り、動揺を隠せない一同。一宿一飯の恩義のある国とはいえ、向かってくるなら迎撃しなければいけません。 そしてそれは既にラクス一党の知る所となっていました。 そんな風雲急を告げる状況の中、ステラから貰った何かの欠片を大事そうに瓶詰めにしてほくそ笑む生まれて初めて妹(故人)以外の女性に興味を持った主人公、シン・アスカ。食堂でルナマリアから敵の増援がオーブ軍と聞いて闘志をたぎらせます。 一方、オーブと戦わねばならないと言うのっぴきならぬ状況に忸怩たる思いのアスランに語りかけるハイネ。 ハ「ならお前、どことなら戦いたい?」 ア「!?いや・・・どことならって・・・そんなことは・・・」 ハ「あーやっぱり?俺も!」 ア「!?」 ハ「そういうことだろ?・・・割り切れよ。今は戦争で俺たちは軍人なんだからさ。でないと・・・死ぬぞ・・・」 ア「はい・・・」 ハイネがアスランの性格をどこまで把握しているかは知りませんが、何事も内に抱え込む性格のアスランを気遣っている事は確かです。彼の開けっぴろげな振る舞いは相手を和ませると同時に相手の緊張や落ち込みを和らげるための彼流のジェスチャーなのでしょう。 一方、ザフト軍の要たるミネルバを撃沈したら敵軍は総崩れというユウナの見解を手放しで褒め、先鋒になる事を要請するネオ。快諾するユウナ。深々と溜息をつくトダカ。天を仰ぐ副官。ユウナは自分達がもっとも危険で嫌な部署を押し付けられたという自覚は無いでしょう。 通常、軍隊において先鋒とは最も重要かつ名誉あるポジションであると言われていますが、同時に最も危険で生存率の低いポジションでもあります。 統率が取れ、士気の高い軍隊であれば、先鋒は最も勇猛で信頼の置ける頼もしい部隊なり指揮官が任命されるのが常です。だからこそ名誉あるポジションであると言われるのです。典型的なのが「銀河英雄伝説」に登場するビッテンフェルトでしょう。彼と彼の艦隊は獰猛かつ勇猛で皇帝ラインハルトの信頼厚い部隊でもあります。 逆に士気の低い烏合の衆のような軍隊や、征服戦争を繰り返して敵国の軍隊を吸収した軍隊であれば、それは最も信用されていない部隊がやらされることになります。典型的な例が漫画「ベルセルク」23巻に登場する戦奴部隊でしょう。彼等は兵士のみならず、身分の上下を問わず強制的に徴兵された成年男子の集団で、粗末な装備を持たされてかつての同胞と戦わされる消耗品です。しかも怯んだり後退したら督戦隊に背中から矢を射かけられるので嫌でも戦わざるを得ません。 今回のオーブ艦隊は督戦隊こそいないけど、間違いなく後者の部類に入ります。しかも司令官たるユウナはその事に気付いていないばかりか、ここで戦果を挙げて大西洋連邦に功績を認めてもらおうという腹のようです。 「よーし始めようか!ダルダロスの暁作戦開始!」とたった今命名した作戦名を宣言する能天気なユウナ。 「ギリシャ神話だよ!ちょっとカッコイイ作戦名だろ?」 嗚呼中間管理職・・・気を取り直して出撃命令を下すトダカ。たとえ司令官がアレでも、オーブの理念に反する戦いでも、それでもオーブという国を存続させるためには戦わねばなりません。続々と出撃するMS隊。その数20機。 いつものようにたっぷり時間をかけてフォースインパルスガンダムに変形した後、カガリに対して行った宣言を実行するべく猛然とオーブ軍に襲い掛かるシン。 「俺は主人公のシン・アスカ!夜露死苦ぅ!」 どかーん! どかーん! 「ガンダムAの人気投票はこのシン・アスカを夜露死苦ぅ!」 ずばーん! ずばーん! 「んもう!インパルスはいいからアスランを映して!」 ミリアリアが見守る中、後方にいるであろうファントムペインの母艦ごとオーブ艦隊を屠るべくタンホイザーの発射準備にかかるタリア。 インパルスとセイバーに苦戦する味方に苛立ち、後先考えず増援の投入を命じるユウナ。悠然と後方で戦闘を見守るネオ。 「 「5,4,3,2,1,0、発射ぁ!」 遂に発射態勢に入るタンホイザー。いよいよぶっ放そうと言うその時・・・・ ビシューン! どっかーん! ずごおおおおおお きーん! 「鳥か?」「いや、飛行機だ!」 「いや、フリーダムだ!」 太陽を背にして颯爽と降臨するフリーダムガンダム。 遂に真の主役が2年間の沈黙を破って歴史の表舞台に姿を現したのです! |
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