PHASE−31 「明けない夜」 |
ステラを泣く泣くネオに引渡し、ミネルバに帰投したシンを待っていたのは役立たずのカカシ兵隊達が向ける銃口でした。手錠をかけられ、艦長室へ連行されたシンを今までに無く厳しく叱責するタリア。 しかし、シンの言い分は死にかけていたステラを物扱いするなんて酷すぎるという、どう考えても軍人としての思考が優先するタリアとはかみ合わない物。何とかとりなそうとするアーサーを制し、とりあえずシンを営倉に放り込むよう命じた後、ドアが開いたままでアーサーや外で様子を窺っていたルナマリアがいるのも気付かずに感情を爆発させるタリア。 「明日の晩飯どうしてくれるのよ!食料庫カラッポなのよ!」 「人間その気になれば靴だって食えるんですよ!」 「エー( ´゚д゚`)靴なんか食べられないよぉ」 「くっそ〜脳味噌の煮込みスープが食べたかったのにぃ〜!」 彼女にしてみれば・・・ @一番の問題児が一番の武勲を立てていて、しかも彼しか戦えるパイロットがいない。それなのに前代未聞の犯罪を犯した。 A彼女と同じく、ザフト中枢の秘密を知っている立場のアスランも最近何かと行動が怪しいので、おいそれと悩みを相談できない。 部下が何かしでかしたら、しわ寄せは結局上官たる彼女に降りかかって来るのです。そんな彼女の気苦労など下っ端たちにとっては知ったことではありません。嗚呼中間管理職・・・指揮官は孤独とはよく言われることですが、今のタリアが正にそうです。 営倉に入ってきたアスランはシンがステラの事で思いつめていた事を気付けなかった事をわびますが、シンは周囲の人間が彼女が被害者なのを理解しようとせずにモノ同然に扱ったことに腹を立てたからと言う意味の事を言いますが、これは目先の感情に突き動かされた果ての暴挙であり、シンの独善と取られても仕方のないところでしょう。 「君とレイはジブラルタルに着くまでメシ抜きだそうだ。」 「えーっ!?そりゃないっすよぉ!」 確かに敵の捕虜とはいえ、死にそうになっている美少女の命を救うためにあえて処断されるのを覚悟で彼女を解放した・・・これはある意味美談ですが、仮に捕まったのがスティングやアウルだったら同じことは絶対に考えなかったでしょう。 シンがステラを開放したのは彼が故マユ以外に好きになった女の子だったからであり、21話のような出会いが無かったらステラがどんなに衰弱して死にかけていても「あの娘も可哀そうに・・・でもあの時ガイアを強奪した一味の一人だから仕方ないよな・・・」で終わったでしょう。仮に助けようという気になっても周囲に諭されて思い留まったかもしれません。 彼は邪まな人物ではありませんが極めて視野の狭い純粋まっすぐ君であるといえます。 その頃、クソ寒くて健康に優しく無さそうなロシア平原ではネオが暖かくて優しい世界に送るはずのステラを伴って地球軍の地上空母ボナパルトに降り立っていました。 スティングはクソ寒さに文句タラタラの上、実の妹のように接していたステラの記憶も消されているのでベッドで苦しんでいる彼女を見ても、ただの死に損ないにしか見えていません。 ネオがジブリールから新たに拝命した作戦は、おり良く完成したデストロイを駆って地球連合に離反したユーラシア西側を中心とした諸都市を焼き払うというもの。「腐った部分は早く取り除かねばならない」とのたまう当の本人が腐った部分であるという自覚もあるわけも無く、作戦遂行を命じるジブリール。シャワールームで忸怩たる想いに浸るネオ。 オープニングで既に素顔を曝しているのに何を今更という気もしますが、未だに素顔を見せてくれません。 しかし、真冬のロシア平原に、かつてロシアの冬将軍に敗れた征服者の名を冠した縁起でもない名前の空母を送り込むとは・・・それだけで地球軍の敗北を予感させてしまいます。 一方、フィヨルドのドックに向かうアークエンジェルではカガリ自らが新たに合流したオーブ兵達にアークエンジェルの現状に関する説明会を開いていました。 それによれば、アークエンジェル一党を匿ってくれているスカンジナビア王国は故ウズミと親交があり、全大戦の時も真っ先に救援の手を差し伸べてくれたとのこと。ガンダムA連載のアストレイではジャンク屋ギルドがオーブの救援活動と復興事業を手がけていましたが、これがスカンジナビア王国の差し金だったのかもしれません。 国王陛下という人物がどのような人物かはまだ不明ですが、危険を冒してアークエンジェルを匿うくらいだから相当な傑物かもしれません。 「まだ間に合うというのなら、お父様のように常に諦めぬ良き為政者となる事で!」 カガリの凛とした決意表明に彼女に対する敬慕と忠誠を新たにするオーブ兵達。彼等はシン達と違い、非常にいい意味で前向きです。 カガリ達が楽しく盛り上がる一方、またしても親友と戦う事になってしまった事に一人想いを馳せるキラ。マリューに問いかけるキラ。自分達のしている事は馬鹿げてて間違っているのか?と・・・そんなキラに優しく答えるマリュー。人は愛する人がいるからその人のために頑張れるんだと。そして敵対してしまったアスランとも、またいつか手を取り合えると。 「キラ君、どうしたの?悩みがあるなら聞いてあげるわよ」 「実は僕、マリューさんのオッパイに挟まれたいんです。」 「いいわよ。挟んであげる」「えっ!?まじっすか!?」 「なんて言う訳無いでしょ!このエロ餓鬼が!」「ぐえっ!頭蓋骨がへこんだ!」 その頃、クソ寒いロシア平原ではネオが体がすっかり良くなったらしいステラによからぬことを吹き込んでいました。ステラがデストロイに乗って戦わないと恐ろしい者が来て自分達を殺すと・・・そして進撃を開始するボナパルト。ちなみにこの戦艦、ダブテ陸戦艇と同じキャタピラ走行のようです。 同じ頃、修理中のミネルバでには司令部からシンとレイの処分について通達が来ていました。不安を感じながらも死刑だけは勘弁して欲しいと願うタリア。しかし、その内容は目を疑う物でした。その内容は・・・ 「拘束中のエクスペンデッドが逃亡中に死亡した事は遺憾であるが、貴官のこれまでの功績と戦況を鑑み、本件については不問に付す」 ・・・というタリアが送った報告の内容を捻じ曲げてシンとレイを無罪にするというもの。 あまりにも露骨な事実の歪曲に愕然とするタリアとアーサー。そこに連行されてくるシン。周りのカカシ兵士達は彼が銃殺されるであろうという期待に目をキラキラと輝かせています。 ロシア平原では地獄絵図が繰り広げられていました。ザフト軍も珍しく勇敢に立ち向かいますが、相手が世紀の怪物ではどうしようもありません。全ての攻撃は陽電子リフレクターに阻まれ、デストロイの前方位攻撃に木っ端のように無残に蹴散らされるザフト軍。容赦なく住民ごと焼き払われる都市。瞬く間に3つの都市が灰燼に帰してしまいます。 ミネルバではラウンジにやってきたシンが早速アスランに突っかかります。 「あなたの言う正しさが全てじゃないってことですよ」と・・・ 確かに一理あるセリフですが、この大馬鹿者は自分が感情に流されて逃がしたステラが何をさせられているかという事をまだ何も気が付いていません。 「ステラはねぇ、帰ったんですよ」 ずごごごごごごご・・・・ 「暖かくて・・・」 どかーんどかーん どかーんどかーん 「優しい世界にねえ!」 「どこがやねーん!」 そして入れ替えに繰り広げられる惨劇。シンの愚かさが際立つ演出です。 |
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